○知多市みんなで支え合う防災減災推進基本条例

平成30年12月11日

条例第26号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第9条)

第2章 災害予防対策(第10条―第14条)

第3章 災害応急対策(第15条―第19条)

第4章 復興対策(第20条)

第5章 応援協力(第21条・第22条)

附則

私たちのまち、知多市は、大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)に基づく、東海地震に係る地震防災対策強化地域及び南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成14年法律第92号)に基づく、南海トラフ地震防災対策推進地域に指定されており、これまで地域防災計画を作成し、修正を重ね、地震対策を積極的に推進してきた。

また近年、日本各地では、大型台風や局地的な集中豪雨に起因する災害が多発し、大きな被害をもたらしており、県内においても平成12年9月の東海豪雨や平成20年8月末豪雨では、甚大な被害が発生した。

こうした状況において、本市においては、災害から市民のいのち、身体及び財産を最優先で守り、市民生活や経済活動等への支障を最小限にとどめるため、安全で強靭なまちづくりの推進を最重要課題として位置付け、建物の耐震化などのほか、地域社会の基盤となる人と人との絆づくり及び防災意識や防災技術の向上に努めてきた。

災害が発生した場合には、行政が市民等を支援する「公助」だけでなく、自分の身は自分で守る「自助」、身近な地域でお互いが助け合う「共助」が、大きな力となる。

市民、自主防災組織、事業者、市及び議会が、それぞれの責務や役割を十分理解し、これらが一体となって、災害に立ち向かう強い決意を明確に示し、相互に連携、協働し、災害の予防、減災、応急復旧及び復興に係る対策に関する体制を整備し、災害から市民を守り、災害に強い安全で強靭なまちづくりを推進するため、ここにこの条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、防災対策についての基本理念を定め、市民、自主防災組織及び事業者(以下「市民等」という。)、市並びに議会の災害対策における責務を明らかにするとともに、災害予防対策、災害応急対策、復興対策及び応援協力に関する基本的な事項を定めることにより、災害対策の確立を図り、被害を最小限に軽減し、もって市民の生命、身体及び財産を災害から守ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 災害 暴風、竜巻、豪雨、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事、爆発、事故等により生ずる被害をいう。

(2) 防災 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害により被災した地域の復旧、復興を図ることをいう。

(3) 減災 災害が発生した場合における被害を可能な限り軽減することを目指す考え方及びそのための取組をいう。

(4) 市民 市内に住所を有する者及び居住する者をいう。

(5) 事業者 市内において、事業活動又は経済活動を営む法人又は個人をいう。

(6) 自主防災組織 災害対策基本法(昭和36年法律第223号。以下「法」という。)第5条第2項の規定に基づき、コミュニティ、町内会、自治会、行政区等を単位として自主的に結成された防災組織で、市民が連帯して防災活動を行う任意団体をいう。

(7) 防災関係機関 警察、自衛隊、報道機関、法第2条第4号に規定する指定地方行政機関、同条第5号に規定する指定公共機関、同条第6号に規定する指定地方公共機関、一部事務組合等、公共的団体及び防災上重要な施設の管理者をいう。

(8) 要配慮者 災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に、何らかの配慮が必要とされる高齢者、障がい者、乳幼児、妊婦、傷病者及び日本語が不自由な外国人等をいう。

(9) 避難行動要支援者 要配慮者のうち、自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため、特に支援を要する者をいう。

(10) 帰宅困難者 市民及び市外から市内に勤務し、在学し、若しくは滞在し、又は市内を通過する者で帰宅することが困難になった者をいう。

(基本理念)

第3条 市民等、市及び議会は、防災に関する基本的責務を有しており、次に掲げる理念に基づき、継続的な災害対策の充実及び強化に努めなければならない。

(1) 自らの身は、自らが守る自助の理念

(2) 地域コミュニティ等においてお互いが助け合い、お互いを災害から守る共助の理念

(3) 市が市民を災害から守る公助の理念

2 市民等、市及び議会は、地域全体で災害対策に取り組む防災協働社会の形成推進を図るとともに、過去の災害から得られた知識及び教訓を後世に伝え、今後起こり得る災害に備えるよう努めなければならない。

3 大規模かつ広域的な災害においては、市民等、市及び議会は、自らの安全を確保した上で、周囲を助ける支援者として協力する体制の構築に努めなければならない。

(地域防災計画への反映)

第4条 法第16条第1項の規定により設置された知多市防災会議は、法第42条第1項の規定により作成された、知多市地域防災計画を修正する場合は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)を尊重し、及び反映させなければならない。

(市民の責務)

第5条 市民は、自ら災害に備えるため基本理念にのっとり、平常時から次に掲げる事項の実施に努めなければならない。

(1) 所有する建築物の耐震性の確認及び耐震改修・補強

(2) 地震による家具等の転倒落下防止、ガラス等の飛散防止及び出火防止のための火気使用設備、器具の転倒防止

(3) 災害時における初期消火、被災者の救助、応急手当その他の初期活動を円滑に行うための準備

(4) 飲料水、食糧、医薬品その他の生活必需品の備蓄、資機材及び非常用持ち出し袋の用意

(5) 避難所、避難場所、避難経路及び避難方法の確認

(6) 災害発生時における外出先からの帰宅方法、家族間の連絡方法及び集合場所の確認

(7) 防災情報の収集並びに家族及び周囲への伝達体制の確立

(8) 市、自主防災組織又は事業者との災害対策活動における連携及び協力

(9) 防災訓練、講習会等への積極的かつ継続的な参加、協力による知識及び技術の習得等

2 市民は、自らが居住する地域の一員である責任及び役割を自覚するとともに、日頃から地域社会に関心を持ち、近隣世帯間の相互協力、地域でのつながりを意識した、顔の見える絆づくりに努めるものとする。

3 市民は、災害発生時において、次に掲げる事項の実施に努めなければならない。

(1) 自己及び家族の安全確保

(2) 地域の一員としての、市民相互の安全確保

(3) 市、自主防災組織又は事業者との相互協力による災害応急対策

(自主防災組織の責務)

第6条 自主防災組織は、自ら災害に備えるため、平常時から次に掲げる事項の実施に努めなければならない。

(1) 防災情報の収集及び伝達体制の確立

(2) 防災知識の普及及び防災訓練

(3) 防災用資機材等の調達、備蓄及び管理

(4) 自主防災組織の活動を担う人材の育成

(5) 地域における災害危険箇所、避難場所、避難方法の把握及び市民等への周知

2 自主防災組織は、地域の実情を勘案し、市民及び事業者が自主防災組織の活動に参加しやすい環境の整備に努めるものとする。

3 自主防災組織は、災害発生時に市民の安全を確保するため、市、市民及び事業者と相互に協力して、災害対策に努めなければならない。

(事業者の責務)

第7条 事業者は、その社会的責任に基づき、自ら災害に備えるため、平常時から次に掲げる事項の実施に努めなければならない。

(1) 所有する建築物の耐震性の確認及び耐震改修

(2) 地震による機器設備等の転倒落下防止及びガラス等の飛散防止

(3) 初期消火、被災者の救助、応急手当その他の初期活動を円滑に行うための準備

(4) 飲料水、食糧その他の必要となる物資の備蓄

(5) 避難所、避難場所、避難経路及び避難方法の従業員及び事業所に来所する者への周知

(6) 防災情報の収集及び伝達体制の確立

(7) 従業員の防災訓練、講習会等への積極的かつ継続的な参加による知識及び技術の習得

(8) 事業継続に係る計画の策定及び防災活動の推進並びに災害に対する危機管理体制の整備

(9) 市、市民又は自主防災組織及び消防団等との災害対策活動における連携及び協力

2 事業者は、災害発生時において、次に掲げる事項の実施に努めなければならない。

(1) 従業員及び事業所に来所する者並びに管理する施設及び設備の安全確保

(2) 地域の一員としての、事業所周辺地域の市民の安全確保

(3) 市、市民及び自主防災組織との相互協力による災害応急対策

(4) 従業員の一斉帰宅の抑制及び帰宅困難者対策のための飲料水、食糧その他災害時において必要となる物資の供給

(市の責務)

第8条 市は、市民の生命、身体及び財産を災害から最優先で守るとともに、被害を最小限にとどめ、市民生活や経済活動への支障を極力少なくするため、平常時から次に掲げる施策を実施しなければならない。

(1) 所有する建築物の耐震性の確認及び耐震改修

(2) 管理する道路施設、河川施設、上下水道施設等の安全確保

(3) 災害対策に関する計画の策定及び防災活動の推進並びに災害に対する危機管理体制の整備

(4) 避難者等に必要な飲料水、食糧その他の必要となる物資の備蓄

(5) 防災情報の収集及び伝達体制の確立

(6) 職員の防災減災対策に関する知識及び意識の向上

(7) 県、防災関係機関及び市民等と連携した災害対策

(8) 市民等に対する防災知識向上のための啓発

(9) 建築物の耐震診断及び耐震改修に関する指導、啓発及び支援

(10) 家具等の転倒落下防止対策及びガラス等の飛散防止対策の推進及び支援

(11) 自主防災組織、災害ボランティア等が活動を行いやすい環境の整備

2 市は、災害発生時に次に掲げる事項の実施に努めなければならない。

(1) 災害情報の収集及び市民への情報提供

(2) 早期の救難、救助、水防活動、消防活動及び応急措置

(3) 業務継続計画に基づく行政機能の継続性の確保

(4) 二次災害の防止対策

3 市は、災害発生後に市民等の協力を得て、早期の復旧及び復興に努めなければならない。

(議会の責務)

第9条 議会は、市の区域並びに市民の生命、身体及び財産を災害から守るため、平常時から地域の特性を勘案した防災・減災に関する調査及び研究を行い、市の災害対策への助言及び提言を行うよう努めなければならない。

2 議会は、災害発生時に被害状況を把握し、迅速な意思決定、多様な市民要求の反映その他議会としての権能を適切に果たすとともに、市民に対する情報発信等、適切な対応に努めなければならない。

3 議会は、国及び県への災害復旧の推進並びに支援活動の実施及び調整等、働きかけを行い、災害予防、災害応急対策及び復旧、復興の推進に努めなければならない。

4 議会は、国及び県の動向を踏まえつつ、地域の実情に合わせた市の防災・減災対策の執行の監視及び評価に努めなければならない。

第2章 災害予防対策

(災害に強いまちづくりの推進)

第10条 市は、総合計画に掲げる道路、河川、海岸、公園等の都市基盤の整備、市街地の再整備その他の事業を通じて、災害に強いまちづくりを総合的に推進しなければならない。

(防災知識の普及等)

第11条 市は、防災に関する知識の普及及び情報の提供を積極的に推進し、市民等の防災意識の高揚に努めなければならない。

2 市は、市民の防災に関する能力向上のため、自主防災組織及び事業者と連携し、積極的に防災訓練を実施するよう努めなければならない。

3 市は、教育施設及び保育園等の社会福祉施設において、園児、児童及び生徒等に応じた防災に関する知識、技術及び災害発生時において適切に行動する力、生命を守る力を身に付けることができるよう、防災に関する教育の推進に努めなければならない。

(自主防災組織及びボランティアに対する支援等)

第12条 市は、自主防災組織の活動に対して、指導的役割を担う人材の育成等、必要な支援を行うよう努めなければならない。

2 市は、災害ボランティアコーディネーター(ボランティアによる活動が円滑に行われるようボランティア相互間の調整等を行う者をいう。)の育成に努めなければならない。

3 市は、災害発生時に、ボランティア活動が円滑に実施されるよう人材の確保及びボランティアの受入体制の整備に努めなければならない。

4 市は、自主防災組織、消防団その他災害時に支援活動を行う団体が、相互に連携を図り補完し合うことにより、被災者に対して必要な活動を一体的かつ効果的に行うことができるネットワークづくりの促進に努めなければならない。

(要配慮者への支援)

第13条 市民等及び市は、災害発生時に備え、要配慮者に配慮した情報提供及び避難の支援が円滑に行われるよう、体制の整備に努めなければならない。

2 避難所である施設の管理者は、要配慮者に配慮した施設の整備に努めなければならない。

3 市は、要配慮者に対する施策の推進に当たっては、警察署、消防団、自主防災組織、コミュニティ、町内会、自治会、区及び民生児童委員等に協力を要請することができる。

(避難行動要支援者に係る名簿情報の整備)

第14条 市は、法第49条の10第1項の規定に基づき、避難行動要支援者の支援を行うために必要な名簿情報を整理し、法第49条の11第2項の規定に基づき、当該情報を行政区、民生児童委員その他の避難支援等の実施に携わる関係者に提供するものとする。

2 前項の規定により、名簿情報の提供を受けた者は、当該名簿情報を適正に管理するとともに、法第49条の13の規定に基づき、避難行動要支援者の支援以外の目的で使用してはならない。

第3章 災害応急対策

(災害応急措置及び対策)

第15条 市は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、災害の発生を抑制し、又は災害の拡大を防止するため、県及び防災関係機関と連携して、次に掲げる事項について、必要な措置又は対策を講ずるものとする。

(1) 救出用及び救助用の資機材等の整備に関すること。

(2) 飲料水、食糧その他避難生活に必要な物資の備蓄等に関すること。

(3) 緊急輸送に関すること。

(4) 避難所に関すること。

(5) 道路上の障害物の除去に関すること。

(6) 医療救護に関すること。

(7) 前各号に掲げるもののほか、市が必要と認めた事項

2 市は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、市民等に対し、直ちに避難及び被害の状況並びに応急措置等に関する情報を提供するものとする。

(避難対策)

第16条 市は、飲料水、食糧その他の避難生活に必要な物資の確保及び供給のために必要な措置を講ずるものとする。

2 市は、市民等に避難所、避難場所、避難指示等の情報を提供するものとする。

3 市は、傷病者に医療を行い、救護するための体制の整備に努めるものとする。

4 市は、避難所における感染症対策のために必要な措置を講ずるものとする。

5 市民は、市及び防災関係機関からの災害に関する情報の収集に努め、危険を認知したときは、自主的に避難するとともに、市から避難に関する情報があったときは、これを考慮して自らの身の安全を確保するよう努めなければならない。

6 市民は、前項の避難を迅速かつ円滑に行うため、平常時から避難所及び避難場所の所在並びに避難経路を確認しておくよう努めるものとする。

7 自主防災組織は、災害の程度に応じて、防災に関する活動を行う機関及び団体と相互に連携し、災害時における避難経路の安全確認及び市民の避難誘導に努めるものとする。

(避難所運営)

第17条 市は、避難所及び避難場所の確保及び整備に努めるものとする。

2 市は、避難所で生活する避難者だけでなく、自宅等で避難生活を送る者も支援の対象とするよう努めるものとする。

3 市民は、相互に協力し、避難所を円滑に運営するよう努めるものとする。

(緊急輸送の確保)

第18条 市は、災害発生時に応急対策を円滑に実施するため、関係機関と連携し、道路啓開(緊急車両等の通行ができるように最低限のがれき等の処理を行い、簡易な段差修正により道路を使用できる状況にすることをいう。)及び車両等の調達に関し措置を講じ、緊急輸送が円滑に行えるよう努めるとともに、国、県、他の地方公共団体及び関係団体と調整を行うよう努めなければならない。

2 市民等は、警戒宣言が発せられた場合又は災害が発生した場合において、自動車の使用を自粛する等、緊急輸送が円滑に行われるように協力するよう努めるものとする。

(帰宅困難者対策)

第19条 市は、帰宅困難者に対して適切な情報提供その他の支援を行うよう努めるものとする。

2 事業者は、従業員及び事業所に来所する者の円滑な帰宅及び帰宅困難者の安全の確保のために必要な対策を講ずるよう努めるものとする。

3 学校及び保育所その他子育て支援を行うことを目的とする施設の設置者又は管理者は、幼児、児童、生徒等の安全の確保のために必要な対策を講ずるよう努めるものとする。

第4章 復興対策

第20条 市は、災害により市内に重大な被害が発生したときは、防災関係機関との連携を図り、速やかに被災した地域の復興に必要な対策を講じなければならない。

2 市は、国及び県の策定する復興基本方針を受け、市民等の意見等を反映した復興計画を策定し、市民生活の再建及び安定に努めなければならない。

3 市民等は、市の実施する復興事業に協力し、ともに推進するよう努めるものとする。

第5章 応援協力

(協力の要請)

第21条 市は、災害時に迅速かつ円滑に応援協力を要請することができるよう、あらかじめ他の地方公共団体や事業者等と防災に係る協定を締結し、必要な体制を整備するよう努めなければならない。

(他の被災地に対する支援)

第22条 市は、甚大な被害を受けた他の被災地に対し、市民等の協力を得て、県及び防災関係機関と共に必要な支援を行うよう努めるものとする。

2 市民等は、県、市及び防災関係機関が行う支援に協力するよう努めるものとする。

この条例は、平成31年4月1日から施行する。

(令和2年条例第28号)

この条例は、公布の日から施行する。

(令和4年条例第3号)

この条例は、公布の日から施行する。

知多市みんなで支え合う防災減災推進基本条例

平成30年12月11日 条例第26号

(令和4年3月23日施行)

体系情報
第3編 執行機関/第1章 長/第8節 災害対策
沿革情報
平成30年12月11日 条例第26号
令和2年9月28日 条例第28号
令和4年3月23日 条例第3号